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新卒主義の六つの弊害・後編

数年前、ガソリンスタンドに立ち寄った私は、そこで働いていた従業員の姿を見て息を呑んだ。
頭を下げて「レギュラーですか?」と聞いてきた彼は、中学校の同級生だった。

子供の頃、彼は大変な勉強家だった。
両親にテレビを禁じられ、勉強三昧の日々を送っていた彼は、当時流行っていた遊びもゲームもアニメも知らず、友達同士の話題に入れない事もしばしばだった。
中学卒業後、県内屈指の名門高校に進んだ彼と連絡を取り合う事はなかったが、人伝に、名門校を卒業し、東京の会社に勤めていると聞かされていた。
さすがは幼少の頃から努力してきた男だ。彼は、就職氷河期にも負けなかった。そう思っていた。

だが、その彼が今、私の車にガソリンを入れているのだ。
彼は私に気付いたようだったが、私はそ知らぬ振りを通すと、一言「ありがとう」を告げてアクセルを踏んだ。

後に知ったが、彼は無事に就職はできたもののブラックな企業に当たってしまい、五年で離職を余儀なくされたそうだ。その会社自体、数年前に倒産したという。
故郷に帰り、彼は再就職先を探した。だが、30手前の歳では学歴など役には立ちはしない。この不況下で彼が有りつけたのは、地元の小さなガソリンスタンドだった。

彼の幼少から積み重ねてきた努力が全て無駄になってしまった事を知った時、私は余りにもショックだった。
親にテレビも漫画も禁止され、勉強漬けで育った彼の半生は・・・・一体なんだったのか?

いや、そういえば・・・・大学進学率ゼロの高校から唯一大学に入った私も、今はこんな身だ。
おそらく高校の同級生たちは、私は良い仕事に就いているものだと思い込んでいる事だろう。


2006~2009年の好景気の年、私が派遣として入っていた大手企業に新卒が続々と入社した。
高卒枠も拡大し、高卒の子達も沢山入ってきた。彼らは好景気のお陰で、一次試験を受けただけで採用されていた。
その彼らの姿を見た時、私は総身の震えが止まらなかった。
それは、彼らへの嫉妬から生じた震えではない。我が身の境遇を嘆いての震えではない。
私が学童の頃に、
「受験勉強を勝ち抜き、良い大学を出た者は勝ち組になり、努力を怠った者は負け組になる」
という嘘を教え続けた教育者たちに対する怒りだ。憤怒の震えだ!
新卒主義下では、努力したって新卒の時に大不況に当たってしまえば、良い職に就く事は困難になる。逆に、努力しなくたって新卒の時に好景気に当たれば、簡単に大手に入れてしまう。受験勉強を勝ち抜いて良い大学を出た所で、その学歴の価値を保てるのはわずかな期間に過ぎない。
その事実を、なぜ教育者たちは学童に教えないのか?

今、机に向かって必死になって勉強している学童たちは知っているのだろうか?
良い大学を出た所で、新卒の時に大不況に当たってしまえば、希望職はおろか就職自体が危ぶまれるという事実を。
深夜、友達と肩を並べて塾から帰路に着く学童たちは知っているのだろうか?
良い大学を出た所で、学歴の価値を保てるのはわずかな期間に過ぎないという事実を。

『新卒主義の六つの弊害』後編を続ける。
 



4.年功序列制度に必ず弊害をもたらす。


日本は、年功序列制度を採っている。
これは勤続年数に応じて、給与の額と地位を決めるシステムだ。
(中途採用で入った場合は、勤続年数が足りずとも、年齢・職歴・有資格に応じて配慮してくれる所も多い)
一度正社員として入ってしまえば、努力せずとも誰もが高給取りになれる上に、ポストにも就けるという素晴らしい制度だ。
だが、この制度を正常に機能させるには、一つの条件が必要となる。
それは“社員人口が、年代ごとにほぼ均等に保たれなければならない”という条件だ。

例えば、一つの会社に、20代、30代、40代、50代の社員が各100人ずついたとしよう。
年功序列制度下では、50代の社員が最も高賃金となるが、逆に、20代の社員は最も低賃金になる。
この場合は高賃金と低賃金の社員が同数いる為に、「±0」であり、別に人件費で頭を抱える心配はない。
また、年功序列制度下では、50代の社員が上級管理職を務める事になるが、その50代の社員が定年退職してしまってもポスト不足に陥る心配はない。なぜなら、その下に“同数”の40代の社員(次期・上級管理職候補)が控えているからだ。
年功序列制度は、各年代の社員数が均等である限り、見事に機能する。

では、社員人口が年代ごとに不均等になればどうだろうか?
30、40、50代の社員人口が100人ずつなのに対し、20代だけ1000人いればどうだろうか?
20代の社員は低賃金で済む為、景気さえ良ければ幾ら増えても人件費を圧迫する恐れはない。だが、30年後はどうだ?

新卒主義の弊害1

その1000人の社員が50代になった時、企業は人件費に頭を抱えねばならなくなってしまう。

逆に、30、40、50代の社員人口が100人ずつなのに、20代の社員だけ10人しかいなければどうなるか?
しかも、景気回復後も急減した世代を補充しなかったら?

新卒主義の弊害2

彼らが50代になった時、上級・中級管理職を務める人材が不足するという問題が生じ、会社の運営が成り立たなくなってしまう。

お分かりだろうか?
年功序列制度を正常に機能させるには、社員人口が年代ごとに均等になるように調節せねばならない。不況の年は社員を採らぬ代わりに、好景気で人手が必要となった年は、中途採用枠を広げ、社内の各年代がほぼ均等に増加するように注意しなければならないのだ。
だが、新卒主義は、この調整を妨げてしまう。
新卒主義を採る企業は、好景気を迎えても新卒の求人を拡大するばかりで、中途採用枠をほとんど広げない。社内に不足している世代(不況の年に新卒だった世代)を補充しようともしない。
その為、社員人口が年代ごとに不均等になってしまい、企業は、人口の多い世代が50代になる度に人件費で悩まされ、人口の少ない世代が50代になる度に管理職を務める人材の不足に悩まされてしまう事になる。
新卒主義は、年功序列制度に不可欠などころか、逆に弊害をもたらしてしまうのである。{*2}




5.新卒主義は、氷河期出身者の離職率を高める。


今、中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が就職後3年以内に離職する 「7・5・3現象」が起きている。
だが、別にこれは特殊な現象ではない。
明治30年代に農商務省がまとめた『職工事情』によれば、当時の日本の労働者の一年間における離職率は、実に100%である。昔は、一つの企業に留まって忠誠を尽くすという習慣が無く、少しでも賃金の良い所に異動を重ねるのが普通で、転職を重ねる事がスキルアップの一つとも考えられていた。
(これは米国でも同じだ)
だが、雇用状況が改善されるに連れ、この率は次第に下がり始めた。気付けば新卒で採用された者が定年退職まで一社に留まり続けるという、“特殊な現象”が発生するようになった。

これは雛(新卒)の段階で巣(企業)に迎えた鳥(労働者)が、他の良い住処を探しに飛び立ってしまわないようにと、その足を“勤続年数を重ねるほど得をする年功序列制”“徹底した福祉厚生”“終身雇用”“会社への愛着心を深めさせる為の各種イベント(社内旅行、忘年会、結婚祝いの配布など)”等の蔓で縛り付けていた為だ。
だが、今は中高年の雇用を守る為に若い社員の給与は低く抑えられ、終身雇用は崩壊し、不況を理由に各種イベントを取りやめたりと、その蔓は次々と枯れつつある。
足を絡め取っていた蔓が枯れれば、鳥は飛び立って当然であり、若者の離職率は高まって当然だ。

しかし、蔓が枯れた事だけが、離職率が高まった原因とは言い難い。
もう一つ、就職氷河期に就職した若者の“転職する事を前提とした就職”が上げられるだろう。
就職氷河期、就活中に出会った子達は良く言っていた。

「この不況の中、仕事なんか選んでたらアカン。希望職に就けへんねんやったら、取り合えず何でもええから入れそうな所に入っといたらええねん。そこで職歴作ってから、景気良うなった時に転職したらええねん」

新卒主義下では、チャンスは一度切りでああり、今年を逃せばほぼ来年はない。
就職自体が危ぶまれるのに、希望職に就くなどかなわぬ話だ。しかしだからといって、企業側の勝手な都合の為に、自分の希望を捨てたがる若者はいない。
ゆえに、若者たちは対策として、転職する事を前提にした就職活動を行う。
職歴にすれば評価されそうなレベルの求人に応募し、面接では「昔からこの仕事がしたかった」「御社に憧れていた」と嘘八百を並べて好印象を与えて採用を取り付ける。そして、その会社で職歴を積んだら、さっさと転職し、希望職の企業に中途採用で食い込むという具合だ。

就職氷河期出身の新卒は、転職がブームになっていたバブル期の新卒よりも離職率が高いそうだが、私からいえば高くて当たり前だ。彼らに取っては、離職は“予定通り”なのだから。
企業側が新卒主義などという偏った採用システムを採るからこそ、このような対策を採る若者が増えるのだ。
本当に自社で長らく働きたいと願う人材が欲しいのならば、全ての年代を募集対象にすれば良い。そうすれば、本当に自社で働きたいと希望する者が訪れてくれる事だろう。後は、前述の蔓を伸ばして絡め取っておけば、安易に離職してしまう心配はあるまい。




6、好景気の年に無能な人材が大量に入社してしまう。


昨年の好景気、ゆとり世代が大量に大手に入社した。
企業側は、学力で劣るユトリ世代をダメな世代などといいながら、新卒主義を改めることは無く、結局、彼らを大量に採用した。
そして、ネット上なので「今年大量に入ってきたユトリは使えない」と愚痴をこぼしている。
本当にユトリ世代が使えないと思うのならば、なぜ、その世代を大量に採用したのだ?
使えないと言いながら、その世代を新卒だからというだけで、大量に採用したのはどこの誰だ?
使えない人材が入ってしまうという事は、イコール、採用方法に問題があるという事ではないか?

そもそも試験や面接だけで、人間の有能無能を判別できるのであれば苦労しない。ほんの数分から数十分の面接だけで、求職者の能力を見抜ける優れた面接官がいかほどいようか?
ましてや好景気の年は、その審査すら甘くなり、定員が足りていないからと新卒でさえあれば誰でも採用してしまうではないか!

本当に優秀な人材を確保したいのであれば、全ての年代を募集対象とし、各企業ごとに独自の査定を用いれば良いのだ。
(別に、従来のように職務経歴書で判断する中途採用を増やせと言っているのではない。何しろ、優秀でありながら、まともな職務経歴書が用意できないが為に、底辺の仕事で食いつないでいる人材も多いのだから)

最初の一年間は新卒中途を問わずに非正社員として雇用し、その内、使える人材だけ正社員にするという形態を取るもよし。
自社の社員で優秀な者たちに共通する能力を調査し、同じ能力を備えた者(将来的に備える可能性がある者)を割り出す試験を考案するもよし。
スタート時点では非正社員として雇用し、賃金を低く抑える代わりに、自社の業務に必要な資格習得の為の学習費を支援し、資格を習得した者から正社員化するもよし。
自社の業務を再現したシュミレーションゲームを開発し、好成績を収めた者を採用するも良し。
知略を要するコンバットシュミレーションゲームを開発し、志望者同士で競わせ、勝った者を採用するも良し。
そうやって、独自の採用方法を考案して行けばよい。

それがなぜ揃いも揃って、新卒主義などという時代錯誤な方法を採り続けるのか?
無能な人材まで入社してしまう偏った採用方法を採りながら、なぜ、使えない人材が入ってくると嘆くのか?{*3}





<注釈>

{*2}この弊害は将来に起こりえる問題ではない。
高度経済成長期に大量採用された団塊世代が、中高年化し始めた頃から起き始めていた問題だ。

年功序列制度では、社員は毎年昇給する。高度経済成長期は、毎年企業の利益が上がっていた為、社員を毎年昇給しても問題はなかった。
しかし、高度成長期が終焉(1973年)を迎え、毎年企業が成長する保障がなくなった後も、この制度だけは残り続けた。
会社の利益が上がっている訳でもないのに社員は昇給され続け、団塊世代が中高年化するに連れ、人件費を圧迫し始めた。
だが、80年代後半にバブル景気を迎えると、この問題は忘却され、企業はまた新卒を大量採用してしまった。(バブル世代の参入)

バブルが崩壊した時(1990年初頭)、企業は、真っ先に人件費の問題に直面させられた。
社内の中高年層には、高給取りになった団塊世代が多数。社内の若年層には、高給と厚遇を餌に大量採用したバブル世代が多数。
若い世代の方を守る為に、中高年層が大量にリストラされ、辞職した。
だが、その後も問題は解決しなかった。今度は、大量にいるバブル世代が、毎年昇給を続け、人件費を圧迫し始めた為だ。
そこで企業は、1993年以降、正社員を最低限度しか採らないように努め(就職氷河期の発生)、人手が足りない分は他社にアウトソーシングするようになった。
今まで開発・製造・販売まで手がけていた大手企業が、販売だけを行うケースが増えた。
そして、バブル世代が中高年化し、より人件費がかさみ出した頃、アジア危機(1997~1998年)が勃発した。
企業はよりいっそう正社員を採る事を止め(超就職氷河期の発生)、派遣制度を一般に解禁(1999年)し、正社員の代わりに非正社員を採るようになった。

その為、多くの大手企業では、就職氷河期に当たる1993~2005年に新卒だった世代(大卒なら20代後半から30代半ば)が社内に不足しているという状況に陥っている。
この不足している世代が40、50代になった時、多くの大手企業がポスト不足に陥って会社を運営できなくなってしまうことだろう。
また、2006~2009年の好景気の年、企業は過去の二度に渡る教訓を活かさずに、再び新卒だけ大量採用してしまった。お陰で、この世代が50代になった時、またまた人件費の面で問題が発生することだろう。

{*3}念の為にいうが、私自身は別にユトリ世代の方を無能だとは思っていない。
職務経験の無い若者が、即戦力に成り得ないのは当たり前の話だ。
ユトリ教育の為に、彼らは学力で劣るとはいえ、今現在、詰め込み教育時代の学力を維持できている中高年がいかほどいようか?

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Re: No title

> 無能な人間が要職にとどまれる社会を
> 保身の為に与党が目指していますが
> その事に関する主な指摘はどれ?
> 良く分からなかったのですが…

年功序列制度と新卒主義の内、新卒主義の方に関して論じたコラムです。
それ以前に、アナタが仰るようなコラムは書いてはおりませんが?

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