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■ 私の体験1(貢献してもクビに) ■



派遣の身で、複数の会社を回り、幾つもの経営スタイルを見ていれば、次第に目利きが聞くようになるものだ。
新しい会社に派遣されれば、この会社は他社と比べてどこが劣りどこが勝るのか、嫌でも分かってしまう。
団結力も社愛精神も勤労意欲も向上心も無いダメな会社などは、最初に社長を見、ついで幹部を見、最後に食堂や休憩室の様子を見れば、直ぐに判別できてしまうものだ。

社長(職種によってはオーナー)が働かない会社は、基本的に幹部も積極的には働かない。そして、社長も幹部も働かない会社の下(もと)では、社員に勤労意欲が生じることはない。
また、働かない癖に、やたら下の者に説教をし、現場に口出しするような社長(オーナー)がいる会社では、社員の間に激しい反目が生じているものだ。
幹部の中に、全く働かない人がいる会社(私が今まで行った会社の半数に、全く働かない幹部がいた)でも、同じような現象が生じる。
ましてや、その人が人事を勤めている場合などは、社員の反目の激しさは最悪だ。

また、幹部が残業をしない会社は、下級管理職も積極的に残業をしたがらない。
幹部が定時で帰る・・・・すなわち、“幹部の目を気にする必要がない”状態になれば、下級管理職らも最低限度の責務だけはたして、さっさと帰ってしまう事が多い。
下級管理職からすれば、「上の奴らが定時で帰ってるのに、なんでオレが貢献しなくちゃならないんだ」という心境なのだろう。
そして、残業を押し付けられた若い社員や派遣は、上の目がない(監視する人がいない)のをいい事に、一時間で済むような残業をサボリながら二時間も掛けたりする。

どこの会社も、まず上から崩れる。
社長と幹部さえ見れば、勤労意欲や向上心があるか否かなど、容易に察せられるものだ。

会社内の連絡・報告・申告がスムーズに行われているか否かを知りたければ、食堂や休憩室で社員の様子を見るといい。
社長や幹部が、下級管理職や若い社員とテーブルを共にし、談笑する事があるか?
下級管理職が、若い社員や派遣とテーブルを共にし、談笑する事があるか?
社員と派遣が、テーブルを共にし、談笑する事があるか?
そして、テーブルを共にするだけでなく、一緒に飲みに行くなどの付き合いがあるか?
良く談笑し、飲みに行く付き合いもあれば、それは“上下の社員の関係が親密”な証拠だ。
上下の社員の関係が親密な会社は、連絡・報告・申告・助言が非常にスムーズに行き渡り易いものだ。

上下の社員が疎遠な会社では、“要望”一つ取っても、まず社員から下級管理職へ何度も申告し、下級管理職から幹部へやっと申告してもらえるという段階を経なければ、上まで届かない。
そして、幹部に申告が届いても、日頃現場で働かない幹部には、その重要性も有効性も理解できない為、中々、承諾・実行してもらえない。
実に、最初の申告から承諾・対処が行われるまで、数ヶ月から一年以上もの時間を要してしまう事もある。
所が、上下の社員が親密な会社では、小さな事は一々申告せずとも、食堂で談笑するだけで済む。同じテーブルで“談笑”という形を通して、社員から幹部にダイレクトに要望を伝えられるからだ。
しかも、上下の社員が親密な会社は、幹部も社員と肩を並べて現場で良く働く為、その重要性や有効性を直ぐに理解してもらえる。
(そもそも、共に肩を並べて同じ仕事に携わるからこそ、社員と幹部という間柄でも談笑する機会が増え、親しみが湧くのである)
ゆえに、他の会社ならば一年前後も掛かってしまうような事柄が、その日の内に承諾を得、対処してもらえたりする。




数年前に私が派遣された会社は、社長が全く働かない所だった。
幹部にも勤労意欲が見られず、終始マイペースでしか動かない。
食堂でも休憩室でも、幹部と社員が親しく談笑する事もなかった。いや、談笑どころか、年配の幹部は若い社員や派遣とは、ろくに口を聞こうともしなかった。
社員と派遣の間には、共にテーブルを囲む程度の親しみはあったが、飲みに行くほどの付き合いはなかった。
私は初日に、社長と幹部を見、食堂や休憩室を見て、「この会社はダメだ」と思った。そして、数日を経たずして、予想通りの酷い内情を見た。

上の者に勤労意欲がない為に、その影響を強く反映する社員。彼らは現場では、面倒な仕事は全て派遣に押し付けていた。
本来なら熟練を要する作業。長時間の立ち仕事。汗を流すような仕事は、全部、派遣の仕事になっていた。
低賃金であるにも関わらず、過酷な仕事を任される・・・・・まあ、派遣の世界では良くある事だ。
私を含め三名の派遣が配属されると共に、入れ替わる形で三人の派遣が辞めていったが、彼らはこれが気に入らなかったらしい。

連絡事項の非スムーズさも予想通り。
この会社では、一日に何種類かの製品を製造する。一つの製品を一定量製造し終われば、次の製品を製造する為に新しい機材や備品を用意する必要がある。
その役割を幹部社員が担当していたが、日頃からろくに口を聞かない幹部に、誰も進んで報告や依頼を行うとしないのだ。
現場の社員は派遣の子に「○○さん(幹部)に報告してきて」と頼み、派遣の子は「自分は一回報告したから」と拒否し、同僚に「代わりに行ってくれ」と頼む始末。
たかが報告と依頼。言葉を紡ぐだけであり、五分も掛からない。だが、それが全然、スムーズに進まないときている。しかも、毎日そんな調子なのだ。

さらに、予想通りの欠陥が現場にチラホラ見られた。
作業に必要な諸道具が全然足りていない。備品も常に不足しているが、なかなか補充されない。
作業場や棚や設備の位置も不合理だ。
「Aの仕事を終えたら、Bの仕事に取りかかり、それを終えたらAの仕事に戻る。その合間にCの仕事を行う」という工程を行う場合、当然、そのABCを行うべき作業場は、最短距離におかれるべきだ。そして、ABCの作業場で使用される備品や資料が用意された棚等は、ABCの作業場から最も取りやすい位置に置かれるべきだ。
だが、ABCの作業場も棚の位置も不合理な上に、それを誰も改正しようとしないのだ。
全てがダメときている。
これほど酷い会社は、久しぶりだった。

「こんなんアカンやろ」
「ここ、時給はそこそこいいけど、このままやと一年も経たん内に、規模縮小して仕事無くなってしまうんと違いますか?」

新しく配属された派遣仲間には、私よりも沢山の会社を回ってきた人が一人いた。
私以上に、この会社のダメぶりに気付いていた。
気付いた者が二人いれば十分だ。
二人は、休憩の度に愚痴り、会社の不安定さに危機感を抱き続けた。
そして、どちらがいうでもなく自然と、私たちは、この会社の“改善”に努め始めた。
幾つもの会社を回ってきた派遣やフリーターは、各会社が行ってきた幾つもの“思案”と“改革”を見てきている。
ゆえに、どんな方法が“改善”に繋がり、どんな方法が“改悪”に繋がるのかは、嫌というほど知っている。
会社を改善するには、それを実行すれば良いだけだ。
私たち二人が中心となって始めた改善は、以下の通りだった。




[改善1 必要な諸道具は全て揃えきる]

ダメな会社は、作業に必要な諸道具が常に不足しているものだ。申告しても、いつまで経っても支給されない事が多い。
こういう場合は、自腹を切って、自分たちで用意するしかない。
私たちは、会社帰りにホームセンターに立ち寄ると、必要な諸道具を自分たちの分だけ買い揃えた。そして、その足で百円均一shipにおもむき、さらに同じものを複数買い集めた。
百円均一shipで買い集めた方は、各作業場に配備しておく分だ。安物で申し訳ないが、少しは同僚たちの助けにはなるだろう。


[改善2 必要なものは、最初に全て手元へ]

必要なものを必要になった時に用意していては時間の浪費だ。
朝一で、今日一日に行うであろう作業を全て予測し、自分の手元や各作業場に事前に用意しておく事にした。
むろん、各作業場の周囲に適当に置いただけでは、どれをどこに置いたのか分からなくなってしまう。また、小物の類ならば、そこらに適当においているようでは、紛失の恐れもある。
ゆえに、各作業場に、ホームセンターで購入した小さな棚や手作りの棚を設置し、小物の類の置き場を新たに設けた。
大物の類は、周辺の邪魔にならぬ位置に整頓して置き、何の目的で置いてあるのか、いつ使うものなのか、他の同僚にも理解できるようメモを張っておく事にした。
むろん、口頭でも直接説明し、テキストにして渡しておく事も忘れない。


[改善3 距離の短縮]

これは、仕事を効率良くこなす上で、最も重要な事だ。
備品や在庫を取りに行く棚や置き場が、作業場から離れている・・・・これは最も時間を浪費してしまう欠点だ。
棚や置き場の位置を変え、作業場に最も近い場所に配置しなければならない。
十歩掛かる所にある棚は、手を伸ばせば届く位置に。棚が大きすぎて移動できぬ場合は、小棚を用意し、そこに必要な分だけ移しておく。
複数の作業場の者たちが利用する棚は、その複数の作業場に取って最短距離となる位置・角度に移動する。どうしても移動できない棚や一人だけ離れている作業場がある場合は、代わりに、作業場から棚の間にある障害物(机・機械・不要な棚など)を退(ど)かし、最短ルートを確保する。
十歩掛かる所を三歩に。三歩掛かる所を、手を伸ばせば届く位置に。大回りを要するルートは、障害物を退かす事で短縮化。
この一つ一つの小さな短縮が、一日八時間の労働を通して、大きな効率へと繋がるのだ。


[改善4 アクション数を減らす]

この場合のアクション数とは、作業に用いる動作の事を指す。
例えば、機械に部品をセッティングする作業があるとする。
部品はトレイに整然と並べられており、それを取り出し、機械にセッティングする。ただし、トレイから取り出した部品は、一旦、裏返してから機械にセッティングしなければならないとする。
このような場合、

1)片手でトレイから部品を取りだす(1アクション)
2)片手に取った部品を反対側の手に持ち替える事で、部品を裏返す(2アクション)
3)最後に部品を持ち替えた手で機械にセッティングする(3アクション)

という3アクションを要する事になる。
作業の効率を高めるには、このアクション数を減らす必要がある。
この前記ケースならば、トレイに部品を陳列する際、初めから裏返しの状態にしておくことで“2アクション目”を排除する事ができる。
すなわち、3アクションかかる動作が2アクションで済むのだ。
私たちは、各作業のアクション数を減らす為に、色々と工夫を行った。
前記のような方法はもちろん、
“数回置きに高所に手を伸ばして部品を下ろす”というアクションがある作業場では、事前に手元に部品を置けるスペースを用意し、この動作を排除した。
“不良品が出る度に、屈みこんで、机の下にある不良品置き場に廃棄する”というアクションがある作業場では、不良品置き場の位置を腰の高さに変える事で、この動作を排除した。
作業の効率を高める上で、“アクション数を減らす”という工夫は、“距離の短縮”に並んで非常に重要だ。
この一動作一動作の節約が、数千個の製品を扱った時、大きな効率を生み出す事になる。


[改善5 暇の活用]

どんな作業でも、必ず暇が生じる時が訪れるものだ。
作業の内容によっては、一回の作業ごとに10秒前後の暇が生じる場合もある。時には、30秒以上にも及ぶ大きな暇が生じる時だってある。
このような数秒から数十秒の暇は、有効活用せねばならない。
機械に部品をセッティングし、稼動させる。その機械が作業を終えるまで10秒掛かり、その間、作業員の手が空くとする。ならば、その10秒の間に別の軽作業を行えば良い。
五分ごとに暇な時間が十秒生じるならば、その十秒の間でできる別の作業を行う。そうすれば、五分毎に一回、一時間で12回、八時間で96回、別の仕事を行う事ができる。
上手く行けば、一人で二つの作業を終えてしまう事だってできる。
また、30秒以上にも及ぶ長い暇が生じた場合などは、他の作業場の人たちのサポートをしてやると良い。


[改善6 視界の活用]

扱う機械によっては、定期的に作業員が調節するだけでよいというものもある。
また、完全自動だが、目視で状況を常に確認せねばならない機械もある。
そのような機械に、作業員を一人一人配置していては、人手の無駄使いだ。
このような場合は、機械の配置を変えると良い。
常に手作業を要する機械を扱っている作業員の“視界に入る位置”に、そういった機械を移動すれば良いのだ。
そうすれば、作業員は一つの機械を扱いつつ、視野に入った他の機械もチェックする事ができる。
機械の配置を変え、さらに前述の“暇の活用”を用いれば、今まで五人で担当していた作業が、三人で済んだりするものだ。


[改善7 無駄な作業の排除]

どこの会社にも、どんな職種にも、必ずと言ってよいほど、無駄な作業が存在する。
誰も統計を取っておらず、今までもこれからも活用される見込みがないにも関わらず、延々とアナログ作業でとられ続けるデータ。
廃棄場所が同じであるにも関わらず、必要以上に分解・分別される廃棄物。
このような無駄な作業は、片っ端から廃止するに限る。必要な時が訪れれば、その時に再開すればよい。
この“無駄な作業の排除”を実行するには、上の人たちを説得する必要がある。だが、この会社では、幸いにも現場で一緒に働いている社員さんを説得するだけで済んだ。
上の幹部らは日頃現場で働いていない為に、下の者が勝手に廃しても気付かなかったのだ。


[改善8 働かない幹部の仕事を自分でやってしまう]

団塊世代は働き者だったという。
だが、それは過去のものとなり、今や年功に安住してしまった人が多い。
私はあちこちの会社で定年退職前の団塊世代を数多く見てきたが、“働き者”の団塊世代とやらは、ほとんど目撃する事ができなかった。
この会社も例に漏れず、工場長(団塊世代)以外の年配の幹部社員は、終始マイペースでしか働かなかった。
既に、
「この会社では、一日に何種類かの製品を製造する。一つの製品を一定量製造し終われば、次の製品を製造する為に新しい機材や備品を用意する必要がある。その役割を幹部社員が担当していた」
と前述したが、彼らがマイペースでしか動かず、しかも彼らと現場の社員は口を利きたがらない為、次の作業にスムーズに取り掛かる事ができずにいた。
こういう場合は、彼ら幹部社員が動くのを待たずに、自分たちでさっさとやってしまった方がよい。
私は、彼らの仕事内容を観察すると、その手順を憶えた。
憶えると、彼らの出番が来る度に「次は、○○倉庫の○○を使うんですよね。フォークリフトなら扱った事があるんで、自分で出しといていいですか?」と願い出ては仕事を横取りし始めた。そして、仕舞いには、彼らに報告・依頼するまでもなく、現場の社員と派遣の判断だけで、次の作業に必要な機材や備品を用意してしまう習慣を作る事に成功した。
マイペースでしか働かない上司の仕事を自分たちでやってしまう事も、効率を上げる為には必要な事だ。


[改善9 機械の修復方法も憶えておく]

会社の機械は、古いものも多く、その多くは安全装置すらついていなかった。
(安全装置がついていない機械を使っている会社が、どれほど多い事だろうか?)
作業中、たびたび故障する事があり、その度に若い頃から使い慣れている幹部社員を呼び出しては、修復してもらわねばならなかった。
これも自分たちで修復方法を覚え、故障が生じれば、自力で直せるようにした。
一々、故障の度に工場長や幹部社員を呼んでいては、効率に大きく響いてしまうからだ。


[改善10 マニュアルの作成]

これは、私が最も得意とする作業だ。
新しく入ってきた子達の為に、各作業場や各製品の作業手順を図解化したものをPDFで作成し、配布しようかと思っていのだが・・・・これは未遂に終わった。
その前に、○○になった為だ。(○○の部分は、後を読めば分かる)




以上が、私たちが行った改善策だった。
だが、このように現場の人間が改善に努めても、どこの会社でも、必ず弊害となるものが遅かれ早かれ訪れるものだ。それは、現場の事を丸で理解していない上からの“デタラメな指導”だ。
なぜ、効率が落ちたのか?
なぜ、効率が上がらないのか?
そういう事は、現場に入って働いてみるなり、現場のベテランの人(特に、他社のやり方を見てきている派遣)に聞くなりすれば、容易に分かる事だ。
所が、現場に入らず、現場の人間に聞きもせずに、上の者(あるいは、本社の人)が勝手に“改善策”を考え、実行してしまう事が多い。
そして、現場の事を知りもせずに行われた“改善指導”というものは、百%“改悪”になる。

中でも、最も多い“改悪”は、現場の労働者の意見を聞かずに行われる“整理整頓”指導だ。
なぜ、機械や棚が、このような配置になっているのか?
なぜ、作業場に一見不要に見える棚や諸道具が置かれているのか?
上の者たちは、そういった点を何も聞きもせずに、勝手に配置を変え、無断で諸道具や棚を撤去させたりする。
こちらは考え合って配置しているにも関わらずだ。
見た目が整然と良ければ、効率が上がるとでも思っているのだろう。
このように、上からの指導のせいで、却って効率が落ちてしまう事が多い。
効率が落ちれば、現場の人間の責任にされてしまう為、我々は“上の指導によって行われた改悪を維持したまま、それを改善する”為に頭を悩まさなければならないのだ。

そして、私たちが「改善してやろう」と立ち上がった会社では、毎度、障害として立ち塞がったのは、社長だった。
社長が、たびたびシャシャリ出てきては、「ワシの方がよく知っている」とばかりに、現場の指導を始めるのだ。事務所でタバコをふかしているだけでは、社員に示しが付かないとでも思っているのだろう。
しかし、日頃現場に立たぬ社長の指導などデタラメ過ぎて話にならない。社長が指導する度に、効率が落ちてしまい、我々は困り果ててしまった。
社長が事務所に戻ったスキに、元の効率の良い手順に戻すという事を何度繰り返したことだろうか?

これが最大の障害であり、私は、この障害を克服する為に、一計を案じた。
それは、社長がシャシャリ出てくる余地をなくしてしまうという方法だ。
私は、始業前に現場に入ると、社長が出勤する前に、全ての準備を終えてしまう事にしたのだ。休憩時間も次の準備の為に費やし、社長が口出しする余地をなくした。
これで九割方、社長の弊害を克服する事ができたのである。




かくして我々は、半年掛けて会社の改善に成功した。
以前は一日の生産量は3500〜4000(扱う製品によって、生産量は変わる)だった。
だが半年後には、一日の生産量を4500〜5000にまでUPし、その状態を維持できるようになっていた。
実に、一日1000UPであり、週六日の労働で6000UP、一ヶ月で24000UPだ。24000の生産量は、ちょうど以前の一週間分の生産量に当たる。
実に、一ヶ月にプラス一週間分も生産量を上げる事に成功したのだ。

お陰で、社長には非常に喜ばれた。
そして、会社の方からは、夏期から正社員を数人入れるという話まで流れ出した。
若い社員さんたちは、当然、貢献した派遣の子が何人か正社員にしてもらえるのだと思い、「良かったな」と喜んでくれた。
若い派遣の子たちも、それを期待し、喜んだ。
だが、私は期待していなかった。会社に貢献した所で、派遣が正社員にしてもらえるケースなど滅多にない。
おそらく新卒かしっかりとした職歴のある人を雇用するのだろう。だが、少なくとも、これでしばらくは我々がクビになる事はあるまい。
貢献したのだ。上手く行けば、派遣会社の方から交渉し、時給を少し上げてもらえるかも知れない。
胸の内に、少しばかり希望の灯(とぼしび)があった。しかし、私は間もなく妙な事に気づいた。
既に夏期が近いというのに、派遣社員だけ、いまだに夏服が支給されないのだ。

「まさか、なあ・・・・・」

ほんの少し希望の灯に吹き込んだ、小さな微風。わずかに私の胸中を揺らした不安。
それは、直ぐに灯をかき消す突風となり、私の胸から大きな嘆息を吐き出させた。

「ごめん。もう今週一杯で仕事ないんやわ」

これは、派遣元の担当者から電話が掛かってきた時の言葉だ。
何と社長は、正社員を入れると、貢献した我々派遣を全員クビにしてしまったのだ!
見返りは期待できない事は分かっていた。だが、まさか貢献したのにクビになるとは夢にも思わなかった。
ショックだったが・・・・・まあクビは慣れている為、社長を恨みはしなかった。
そして、当の社長は、クビにした事を悪びれる様子もなく、最終日にあっけらかんと言ってくれた。

「君らのお陰で、何年かぶりに正社員入れる事できたわ。有難うな。また、急がしなった時に来てくれたら助かるわ」

派遣は、正社員を雇用するまでの“代替品”に過ぎない。それが多くの雇用側に共通する認識だ。
貢献しようがしまいが、結局は、使い捨てになる。
そして、社長の口ぶりから分かる通り、“派遣労働者が正社員雇用を切望している”事を雇用側は認識していないのだ。
“派遣は好きな時に働き、好きな時に遊ぶなんて、スタイルで暮らしている”と思い込んでいる雇用主も多い。
遊べる程の賃金を払ってもいない癖にだ。

そして、今回の場合、私たちが会社の業績を上げてしまったが為に、会社に正社員を入れる余裕ができてしまった。その為に、正社員と入れ替わる形で、“代替品”である私たちはクビになってしまったのだ。
何とも・・・・・私たちは、クビにして頂く為に半年間も貢献した訳だ・・・・・。

何とバカバカしい話だろうか?
貢献してもクビになる・・・・これが派遣労働の世界の現実であり、これが派遣労働における最大の問題の一つなのだ。
派遣問題を解決するには、この悪習を正さねばならない。
<続く>




ラブアゲイン




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以下は、私の知人が関西のラジオ番組(ABC)の『おはようパーソナリティ 道上洋三です』に投稿した愚痴である。(番組では取り上げてもらえなかったようだが)
私のブログで取り上げてくれといわれた為、ここに掲載すると共に、氷河期世代、派遣労働問題、フリーターについて語らせて頂こうと思う。
だが、時間が無い為、この第一回目では、解説を添えるに留める。



<以下、転載文>

(前略)

私は、いわゆる氷河期世代と呼ばれる者です。
私が大学を卒業した2000年度は、不況で、就職口がありませんでした。
みな、志望ランクを落とし、高卒が行くような所を選ぶなど、さんざん妥協したものです。しかし、それでも就職内定率が55.8%にしかならないという最悪の年でした。{1}
30社、40社と回っても就職できず、悲観して練炭自殺する人が相次ぎ、当時は社会問題にもなっていました。

あの頃は、就職口が無かった多くの人たちが、不安定なフリーターに身をやつしました。
当時、そんなフリーターの受け入れ口となっていたのが派遣業界です。

派遣社員になれば、非正社員として仕事先を紹介してもらえます。
非正社員は、低賃金で、昇給も昇進もボーナスもありません。
でも、法律では、三年働けば正社員雇用してもらえる事になっています。

「初めの数年間は過酷でも、一生懸命頑張れば正規雇用してもらえる」

多くの若者がそう信じ、派遣に身をおきました。
当時の私も、「努力さえすれば、報われるんだ」と信じ、派遣に入りました。
あの頃は、“世の中は、努力すれば報われる仕組みになっているんだ”と信じていたものです。
数年後、私は、これが全くの間違いで大嘘だという事に気付かされました。


派遣社員は低賃金だからといって、その賃金の低さに見合った仕事を与えら得る訳ではありません。
会社によっては、社員と同じ仕事をするだけでOKという所や、何かと配慮してもらえる所もあります。
でも、大抵の場合、派遣は“社員が嫌がる仕事”をあてがわれるんです。
派遣だけで残業をさせられたり、労働基準法を無視した長時間労働をさせらえたり、社員が休んでいる日も出勤させられる事は良くあります。
酷い所では、現場の仕事を全て派遣に任せ、社員の人は「監督」と称して全く働かないような所もありました。
でも、そんな扱いを受けても、私は「それを堪えて、一生懸命働けば報われる」と信じていました。
でも、違ったんですね・・・・。

道上さん。
我々フリーターが、派遣として、一生懸命、会社に貢献したとします。
人件費が安く済み、しかも貢献してくれたお陰で、会社の業績が上がったとします。
そのお陰で、会社に“正社員を雇用する余裕が出来た”とします。
さて、そうすると会社側はどうすると思いますか?
貢献した派遣を正規雇用してくれると思いますか?
中には、そんな変わった会社もあるでしょう。でも、ほとんどの場合は逆なんです。
会社は、「もう、非正社員はいらないから」と貢献した派遣を全員解雇して、“新卒の子”を正社員として入れるんです。
一生懸命貢献しても、その報いが解雇なんです!
酷い話だと思われるかも知れませんが、どこの会社もこんな事をやってるんです。


法律では、派遣は三年働けば正社員にしてもらえる事になっています。{2}所が、三年頑張れば雇用してやろうなんて会社も、現実にはほとんどないんです。
散々、低賃金でこき使っておきながら、三年経つ前に、契約を切られてしまうんです。
いえ、まだ三年キッチリ働かせてくれる所はいいほうです。
派遣は、幾らでも“替え”が効く上に、退職金を支払う必要もない為、些細な事でも簡単に解雇されてしまうんです。
どこの会社でも、まず、初めに二週間の試し期間があります。
この期間で、不況でリストラされて派遣に流れてきた年配の人、就労経験のない若い子など、戦力になるまで時間が掛かってしまうような人材は直ぐにクビになります。{3}
試し期間が過ぎても、会社によっては、病気で数日入院するとか、会社の人と揉めるとか、はては「時給上げて下さい」と嘆願しただけでも、簡単に切り捨てられるんです。
たとえ順調に働いていても、仕事の少ない時期が訪れれば、人員調整が行われ、理由も無く解雇されてしまいます。
しかも、一、二ヶ月ごとに行う“契約”を更新しないという形態を取られる為{4}、労働基準法に規定された“解雇”とは見なされず、退職金もでません。

若かった頃、「努力さえすれば、報われる」と信じていました。
でも、現実は、どんなに努力・貢献しようが、雇用側はそれに報いる気など初めから無く、文字通り“使い捨て”にされてしまうんです。


“使い捨て”にされるだけでは、永遠に正規雇用にありつく事はできません。
二十代半ばを過ぎた頃、私は「努力しても報われない」と気付くと、一時期、派遣を止めて中途採用を探しました。
たとえ不況でも、何十社と回り続ければ雇用してくれる所が見つかると思ったんです。
所が、これも大きな間違いでした。
道上さん、中途採用を受ける時は、自分の職歴と経験を知ってもらう為に、「職務経歴書」を提出しますよね。
道上さん、ご存知ですか?
日本では、“職歴”として扱ってもらえるのは“正社員雇用歴”だけだという事を。
非正社員は、どんなに働いても職歴にならないんです。
我々フリーターは、派遣としてどんなに働きづめの生活を送っても、どんなに経験を積んでも、「職務経歴書」になにも書く事ができなんです。
我々氷河期世代の「職務経歴書」の中は、真っ白なんです。
20代後半になれば只でさえ就職口が狭くなります。その上、職歴も無い。これでは、どこにも相手にされないんです。
(ただし、地域によっては、「職歴」が無くとも雇用してくれる町工場なんかもあるそうです。私の知り合いは、その為に、わざわざ引っ越しました){5}


どんなに努力しても使い捨てられ、職歴にもならないのであれば、最後の望みは、ただただ景気が回復するのを待つしかありません。
ここ数年、本当に景気回復を祈り続けました。
景気さえ回復すれば、雇用が拡大して、今まで冷遇されてきた私たちにも機会が訪れると思ったんです。
そして、今、まさに好景気が到来しています。
・・・・・所がどうでしょうか?
今、正社員雇用されているのは、全て新卒ばかりなんです。{6}好景気なのに、私たちフリーターの雇用率は、全然増えないんです。
不況の中、十年近くもの間、低賃金で働き企業を支えてきた私たち氷河期世代の存在は、完全に無視されているんです!
それどころか、新卒の子が大量に正社員として入ったせいで、人件費を削減する為に、私たち非正社員の待遇が不況時代よりも悪くなっているんです。
今年の四月から、大量に非正社員が切られたり、土日に出勤しても祝日出勤扱いしてくれなくなったりと、より酷くなっているんです。{7}一体、この世の中はどうなってるんでしょうか!!!
私たちに、一生奴隷で過ごせというのでしょうか!!?


最後に、どうしても許せない事があります。
それは何を勘違いしているのか、「フリーターは、好きな時に働き、好きな時に遊んでいる人だ」と思い込んでいる人が意外なほど多い事です。
道上さん。好きな時にだけ働けて、それで生活できるような仕事って、そんなんどこの国にありますか?
フリーターの中でも独り暮らしの人は、家賃代も払わないといけない為、休みの日も日雇いやバイトをやってるのが普通です。
何年間も休み無しの生活をしている人だって、ざらにいます。
また、何を勘違いしているのか、「フリーターは、自分に会った仕事を見つける為に、好き好んでフリーターをやっている」と思い込んでいる人も結構いるんです。
自分に会った仕事が見つかるまでって・・・・じゃあ、自分に会った仕事が見つかれば、イコール就職できるんですか?
んな、訳ないでしょ!
確かに、不況時代は、「就職できなかった」とは恥ずかしくていえない為、大概の人は「就職できない訳じゃない。自分に会った仕事が見つかるまで就職しないだけなんだ」と言い訳したもんです。
でも、そんなもん只の見栄で言っているだけじゃありませんか!
低賃金で、昇給も昇進もボーナスもないんですよ。直ぐに切り捨てられ、退職金もでず、職歴にもならないんです。
そんな境遇、誰が好き好んでなりますか!?
そんなもん、考えりゃ分かるでしょう!!{8}


・・・・・・・どうも、長い愚痴を書かせて頂きすみません。
でも、書き終わった今、胸に溜まっていたものが吐き出せたようで、少し楽になったような気がします。
これから先、何も明るい未来はありませんが、歯を食いしばって頑張って行くつもりです。
中には、努力しても報われない事に絶望して、働くこと自体止めてしまうような人もいるそうですが{9}、私は家族もいる為、それだけは意地でも避けるつもりです。
どうも、有難うございました・・・・。

<転載終わり>






■ 解説 ■

{1}私も、当時は就職口が無い為、高卒が行くような所を選んで面接を重ねたが、これが却って不味かったような気がする。
というのも、高卒が行くような会社では、大卒を倦厭(けんえん)する傾向があったからだ。
和(ニコ)やかだった面接官が、私の履歴書を見て大卒だと分かった途端、「君、なんでうちにきたん?」と怪訝な表情をした事が幾度かあった。

{2}これは本人の勘違い。
「三年働けば正社員雇用してもらえる」という法律はない。
労働者派遣法の第40条の5には、次のように書かれている。
『派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(第40条の2第1項各号に掲げる業務に限る。)について、派遣元事業主から3年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該3年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、“雇用契約”の申込みをしなければならない。』
(最後の方に記された“雇用契約”とは、正社員雇用という意味)
この条文はあくまで、「会社側が、同じ派遣労働者を3年を越えても使いたい場合は、正社員化しなければならない」という意味であって、「会社側は、3年間頑張った派遣労働者は、必ず正社員化しなければならない」という意味ではない。
つまり、会社の方が正社員雇用を望まないのであれば、三年を迎えた時点で契約を切って構わない事になっている。
実は、これが労働者派遣法の致命的な欠陥であり、この法律を会社側が忠実に守っている為に、我々派遣労働者は浮かばれないのだ。

{3}派遣労働者の中には、元引き篭もりや精神的な問題を抱えている人が混ざる事がある。
こういう人材が混ざってしまうのは、派遣会社が“面接”をろくに行っていない為だ。
私自身、三つの派遣会社に登録しているが、三つとも面接など無かった。ただ、派遣会社の支部に行って、名前と住所さえ書けばOKだった。
派遣会社は、こういった問題のある人材でも、平然と大手の会社に派遣したり、一日十数時間もの労働を要求される会社に派遣したりしている。

{4}こういう形で労働者を切り捨てるのは、ちゃんと“労働者派遣法”や“労働基準法”を守ってくれている会社に限られる。
私は今まで十社近い会社で働いたが、半分以上の会社は、“労働者派遣法”はおろか“労働基準法”すらちゃんと守ってくれてはいなかった。
契約期間が残っているにも関わらず、「今期は仕事が少ない上に、人では足りているから」という理由で、いきなり派遣社員全員が事前告知無しで契約を切られた事もある。
また、小さな会社だと、雇用側が“労働者派遣法”の存在を知らない事も多かった。

{5}職歴無しでもOKという会社なら、幾らでもある。地域によるかも知れないが、少なくとも私の地域には結構ある。実際、派遣仲間の何人かは、最終的にそういう会社に落ち着いている。
だが、そういう会社は雇用条件がかんばしくない。(何しろ「職歴無しでもOK」の会社とは、言い換えれば「新卒や職歴がある人を雇用できるような余裕が無い」会社の事なのだから)
週六日以上働いても、毎日十時間以上働いても、十年近く勤めても、月収が十数万円にしかならない場合が多い。ゆえに、そういう会社に正社員として落ち着いても、生活は少しも安定しないのである。
しかし、そういう会社ですら、35歳を越えた者は相手にしてくれない事が多い。

{6}全くその通りだ。
団塊世代が抜けて人手不足が生じ、しかも景気が回復しているお陰で、雇用は拡大している。だが、雇用されているのは新卒ばかりときている。
派遣労働者の中には、{*3}に記したように問題のある人材が混ざる事もある。だが、それは少数派だ。ほとんどの労働者は働きなれている上に、自ら会社を経営していたような人(不況時代に倒産)や、何種類もの職種を経験してきたお陰で、どんな仕事でもオールランドリーにこなせる人や、生活の為に二つの仕事を掛け持ち昼も夜も働き続けているような人など、経験豊富で勤勉な人材も多数いる。
だが、どこの会社も、“新卒”にばかり固執し、我々非正社員の存在など徹底的に無視している。
就労経験が無いゆえに仕事の「いろは」を知らず、挨拶もままならないような“新卒”の方が良いらしい。

{7}何年間も派遣労働者をやっていて実感するのだが、なぜか、景気回復と反比例して、派遣労働者の待遇が悪くなっている。これはどこの会社も同じだった。
特に、新卒が大量に入るようになってからは、本当に酷くなった。
(公然と、「今年から昇給は無くなる」「今年から祝日は、“祝日出勤”扱いはできない(時給の割増が無くなるという意味)」「祝日出勤の時に支給していた食事は、これからは無しになる」と冷遇化を宣言しておきながら、その癖、「今年からノルマを上げるので、もっと貢献してもらわねば困る」と要求されるのだからたまらない)
最近では、働きづめの生活をしているのに、家賃代すら稼げず、ネカフェで寝泊りしている人(いわゆるネカフェ難民)が増えているらしいが、新卒の大量雇用が続けば、この手の難民はもっと増える事だろう。

{8}確かにそうなのだが、それだけが原因ではない。
実際に、バブル時代には「好きな時に働いて、好きな時に遊ぶ」「好き好んでフリーターをする」というタイプのフリーターが実在したそうだ。
バブル時代は、そういう働きでも十分に食えたし、気に入った仕事が見つかれば簡単に就職できたらしい。
(バブル時代にフリーターをやっていた方に聞いた事があるのだが、何と、当時は時給二千円の所もざらにあった上に、“寸志”と称したボーナスももらえたそうだ)
おそらく、その時のイメージが残っている為に、フリーターでは食っていけないような時代になっても、このような誤解を受けてしまうのだろう。

{9}“中には、努力しても報われない事に絶望して、働くこと自体止めてしまうような人もいる”という部分。本人から聞いたが、これはニートの事を指している。
他にもニートに関して、このような認識を持っていらっしゃる方がいるようだが、これは大きな誤解である。
私は、派遣労働者からニートに転身した人を幾人も見てきているが、その中で“働く事に絶望してニートになった”という人は一人もいなかった。みな、就活の為に、ニートに転身した人たちばかりだった。
我々、派遣労働者が定職(正社員雇用)を見つけるには、資格を取るか、ひたすら就活を重ねる他ない。しかし、派遣労働者として忙しく働きながらでは、資格習得の勉強や就活に励む時間は得られない。
だからこそ、資格習得の勉強に励む為に、仕事が多い都心に出かけて就活に専念する為に、ニートに転身する者が増えたのだ。
実際、どこのメディアの調査かは忘れたが、ニートのほとんどがアルバイトをやっているという統計結果が最近出ている。
私にいわせれば、その統計結果は驚くべき事ではなく当然の事だ。
彼らは、時間的な余裕が作れるアルバイトをやりながら、勉強や就活を続けているのだ。

「ニート=働く事を止めた人」というのは、マスコミによって広められた偏見であり、全くの誤解である。
第一考えてみるがいい。“働く事を放棄する”というのは、イコール、“将来、結婚する事も、自分の家庭を持つ事も、人並みの生活を送る事も、人生を楽しむ事も、自分の家を持つ事も、親が死んだ後の生活の保障も全て放棄する”という事だ。
引きこもりのような精神に問題を抱えている人で無い限り、“働いても報われないから”とか“働きたくないから”などという理由で、普通の人間が、そんな簡単に自分の将来を放棄できるはずがあるまい。




以上、今回は転載と解説に留め、第二回目以降より意見を書かせていただく。
第四回目では解決策、第五回目では番外(引きこもり問題)について語らせていただく。





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四十分と少し・・・・。

車のキーを回す。
車内のデジタル時計を見やり、キーを回した時刻を記憶する。
エンジンを暖める。頃合を見て、暖房をONにする。
デジタル時計の右から二つ目の数字が代わり、一つ目の数字がキーを回した時と同じものに替わる。
十分経過だ。
足元に手を伸ばす。人工的に作られた風が吹き込んでいる。手で温度を確かめる。
わずかに暖かい。だが、その微かな温かみが風力にかき消され、足をおおう時は冷風のように冷たくなっている。
暖房のつまみを調節してみても変わらない。風力を替えても、温度を替えても、足元の調子は変わらない。
それに反して、熱風がやたら顔を仰いでいる。

二十分経過・・・。
まだだ。上半身ばかりが暖められ、下半身、特に足元は冷たいままだ。
“頭寒足熱(ずかんそくねつ)”・・・これじゃ“頭熱足寒(ずねつそくかん)”だ。

三十分経過・・・。
言わなくたって分かっている。二十分経過してもダメなものは、三十分になってもダメだ。
分かってるんだ。

四十分経過・・・。
そろそろだ。
足元に手を伸ばす。しばらく、その姿勢のまま堪える。だが、途中で疲れて元の姿勢に戻る。
何分経過した?
2分か?3分か?どっちにしろ、そろそろのはずだ。
ほら、音が変わった。
もう手を伸ばして確認するまでもない。やっと足元の暖房が効き始めた。

四十分と少し・・・・。
私の車の足元の暖房。効き始めるまで、いつもこれだけの時間が掛かる。
迷惑な話だ。
特に風邪気味の時なんか。特に風邪気味で出社し、やっと仕事を終えて帰ろうとした時なんか。
車に乗り込み、暖を取ろうと暖房をONにする。
風邪に侵され始めた体に必要なのは、“頭寒足熱”だ。でも、待っているのは“頭熱足寒”の拷問だ。
風邪が悪化する。だから足元の暖房だけ止めてみる。でも、それだとなおさら“頭熱足寒”が進行する。
仕方なく「もしかすると、いつもより早く暖房が効くかも知れない」と希望を抱き、足元の暖房を入れなおす。
結局、いつも、これで風邪を悪化させてしまう。
迷惑な話だ。

私の車だけじゃない。母の車も同じらしい。
じゃあ、“私の車”じゃないな。“我が家の車”か?
今度から“我が家の車は、足元の暖房が効くまで四十分と少し掛かる”と愚痴ろうか?
確かに、我が家の車は、私が最初に乗った中古車も、母の以前の車も、ことごとく同じ欠陥を持っていた。
合わせて四台。しかも同じメーカーの同じ車種だ。型まで同じだ。

あ?じゃあ、違うな。
我が家の車じゃない。
スズキだ。スズキの某車種の某型だ。
こいつが、足元の暖房が中々効かないんだ。
迷惑な話だ!


でも、多分、次に車を買い換える機会が訪れても、同じメーカーの同じ型を買ってしまうと思う。
うん。多分じゃなくて、ほぼ100%。
理由は安いからだ。
私たち低所得者に取って、車は安くて足にさえなってくれればいい。
車が正常に稼動している内は、足元の暖房うんぬんの文句も言っていられる。
でも、車が動かなくなって、買い換えるなんて状況に陥ってたら、そんな不満なんてどっかに消えてなくなってしまうだろう。
低所得者は、車を選んだりはしない。車選びの時に注文や文句を付けれるのは、もう少し所得が高い人間の仕事だ。




そういえば最近、国内の自動車販売が低迷しているという。

<深刻な若者の車離れ 国内新車販売25年ぶり低水準>
http://www.j-cast.com/2008/01/17015600.html

国内の新車販売の減少に歯止めがかからない。2007年の国内新車販売は前年比6.7%減の535万3645台と3年連続で減少し、1982年以来、25年ぶりの低水準に沈んだ。メーカー各社は新興市場の伸びを支えに好業績を記録してきたが、国内市場では販売戦略の練り直しを迫られている。
<J-CASTニュース 2008/1/17  より一部転載>



そりゃ、当然だろう。低所得者が増えてるんだ。
車なんて贅沢品を買う奴が増えるはずがない。
私だって、生活に余裕が出来れば、車のカタログを眺める趣味くらいはできるだろう。
去年のメンテの時、車屋さんからカタログをもらった。でも、読む前にハエ叩きの道具に活用され、そのままハエと一緒にゴミ箱の中に消えてしまった。
低所得者に取って車のカタログなんて、それくらいしか使い道が無い。

以前、こういう記事もあった。


<トヨタ本社を1600人が包囲 過労死、賃金抑制、大気汚染で>
http://www.mynewsjapan.com/reports/551

トヨタ高岡工場で働く男性(59)は、下請けへの過酷なコスト削減と低賃金の若者の犠牲の上に築いたボロもうけだと告発。東京大気汚染公害訴訟の西順司原告団長(74)は、トヨタら被告企業が謝罪と損害賠償を拒んでいると批判し、全面解決を求めました。
トヨタ系列会社で昨年、労組を結成したJMIU(全日本金属情報機器労組)組合員の男性(55)は初の春闘。「十二時間の二交代で月七十時間の残業をしても、生活は楽にならない。残業しなくても生活できる賃金にしたい」と語りました。
<MyNewsJapanの2007/03/01に引用されていた“赤旗”の記事を一部転載>



他にも毎日新聞(2007/04/08 中部朝刊26頁)に記載されていた話によれば、2007年2月末の時点で、トヨタの労働者の比率は、正社員が6万7913人に対し、期間工・派遣社員ら1万2000〜1万3000人だという。

おいおいおいおいおいおい・・・・。
国内での販売が伸び悩んでいる時に、肝心のアンタら自動車メーカーが、自社の中にまで“車を買えない労働者”を増やしてどうする?
今の時代、社員の八割九割が非正社員なんて会社はざらにあるが、自動車メーカーまでが真似をする必要は無い。
特に大手の自動車メーカーは、可能な限り正社員を増やして、十分に厚遇してやるべきだ。
そして、働き詰めにせず、ドライブを楽しむ余裕くらいは与えてやるといい。
自動車ディーラーを通さない分、安く車が買えるように配慮してやるといい。

そうすれば労働者たちは、与えた金の何割かを“自社の車を購入する”という形で返してくれるんだから・・・。

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スプーンを取り、コーヒーカップにインスタントコーヒーの粉を注ぐ。
首を傾げながら。
同じスプーンで、クリープの粉をすくい、コーヒーカップに注ぐ。
首を傾げながら。
母は、私のコーヒーの入れ方を見ると、いつも笑う。
「それやと濃すぎるがな」
「えらい、薄いな」

母に笑われるように、私は何年経ってもコーヒーとクリープの粉の濃度と比率を上手く調節する事ができないでいる。
私が入れたコーヒーは、常に、濃すぎたり薄すぎたりする。
その調整の不味さを誤魔化す為に、私は決まって最後に大さじ二杯の砂糖を入れて、全てを帳消しにしてしまう。
だから私に取ってコーヒーとは、甘い飲み物だ。

子供の頃、貧しい我が家では、ジュースなどといった嗜好品は与えられなかった。
その代わり、母が安売りの時に買ってきたインスタント紅茶を良く飲んだ。
砂糖をタップリと入れた紅茶が、私に取ってはジュース代わりになっていた。
カップに並々と紅茶を注ぎ、それを自室に運ぶ途中、チビリチビリと甘さを味わう。そして、自室に着いた頃には、カップの中がほぼ空になっている事が常だった。

幸いにも大人になった今では、こうして自室のPCの前に着いても、カップの中は満たされたままだ。
このコーヒーが冷める前に、一気にブログを書き上げよう。
本日のお題は、先日目にしたニュース記事に関するものだ。
他にも書かねばならぬ事が沢山あるが、今日の限られた時間では、これが一番手っ取り早く済むだろう。





■違法配信によって、崩壊する日本アニメ市場■

【2008年のアニメ産業の行方 DVDビジネスの限界と多チャンネル化
http://animeanime.jp/review/archives/2008/01/2008_dvd1.html

【アニメDVDビジネスは限界を迎えている】

海外の違法配信は、最初はただで観られる、正規版より早く観られるといった誘惑で、アニメファンを引き込んだ。これが本来DVDで観るはずだったファン層を奪っている部分は勿論ある。
しかし、もっと本質的な問題は、多くのアニメファンにアニメはパソコンで観るものという習慣を持たせてしまったことである。

かつては、こうした違法配信は試しであり、本当に気に入った作品は、きちんとDVDを買うとされていた。
しかし、今のアニメファンはインターネットの映像に満足している。ネットがスタンダードだから、DVDを買ってより高画質の映像をテレビで観るという発想がない。これが現在の海外のアニメ市場で起こっていることだ。

だから、日本でもこのまま若い視聴者がPCでの映像になれてしまったら、今後DVDを買う消費者にならないかもしれない。
いま北米やアジアの各国で起きているアニメの映像パッケージビジネスの崩壊は、近い将来に日本でも起きる可能性は小さくない。

しかし、確かなのは、現在作られているほとんどのアニメがDVDパッケージで支えられるビジネスモデルが限界に近づいていることだ。
テレビやネットで数十万人、時には数百万人が無料で観る作品の製作費をわずか数千人、数万人のDVD購入者に依存することは冷静に考えるとかなり歪んだビジネスである。こうしたビジネスモデルは、現在の違法配信の問題がなくても、いずれは壁に突き当たる可能性を持っていた。
<アニメアニメジャパンの2008年01月10日の記事より一部転載>。



■低賃金と人材不足に悩まされるアニメ業界■

日本のアニメ、低賃金・人材不足に歯止め
http://www.business-i.jp/news/enter-page/enter/200710230012o.nwc

ベネチア国際映画祭で話題になった「パプリカ」を手掛けた今敏監督がいる。「美少女セーラームーン」でキャラクターを描いた只野和子さんがいる。他にもアニメ界で師と仰がれる重鎮たちが、10月13日に東京都杉並区で行われた「JAniCA」の設立発表会に勢ぞろいした。
今監督が「アニメ業界が悲鳴を上げ始めて30年ほど。悲鳴を外部に届けようとする団体ができたことは喜ばしい」と協会の設立にエールを送った。
総動員体制による非常事態宣言ともいえる団体の発足。その背景には、アニメ業界で働く人の低賃金ぶりがある。
「時給換算した収入は優秀な原画マンで540円、優秀な作画監督で800円。それより低い人もいる」と芦田代表は説明した。
<FujiSankei Business i. on the Webの2007/10/23の記事より一部転載>。



■衰退するアニメ産業への提案

バブル崩壊以降、日本アニメ業界は悲惨な環境におかれている。
驚くべき低賃金と人材不足の為、海外へのアウトソーシングが起き、国内ではとっくの昔に技術者の空洞化も生じている。
特にイランにアウトソーシングしていた頃は、作画崩壊のアニメが大量に量産され、見るに耐えない酷い状態だった。
私がアニメを見なくなったのも、この時期からだ。

21世紀を迎えてからは、海外に日本アニメファンが大発生したお陰で、少しは息吹を吹き返したかと思われた。
だが、アニメーターたちの低賃金は変わらず、それが改善される前に今度は市場自体が違法なweb配信に押されて崩壊しつつあるという。
経済産業省文化情報関連産業課が作成したファイルの「4.テレビアニメーション番組ビジネス(例)」をご覧いただきたい。
http://www.meti.go.jp/policy/media_contents/downloadfiles/kobetsugenjyokadai/anime200306.pdf
何と、アニメ作成の為にスポンサーが五千万出しても、肝心の元請けプロダクションに渡るのは八百万円に過ぎないというのだ。
当然、これでは赤字である。ゆえにプロダクションは、DVDを売る事で利益を回収するしかないそうだ。
しかし、収益をDVDの販売に依存していては、海賊版やweb上にアップされた違法動画に、直ぐに収益を妨害されてしまう。

祖国の世界に誇るべき文化であるアニメを守り、外貨獲得に欠かせない海外市場を死守し、日本が誇るべき近代の匠であるアニメーターを救うには、どうすれば良いだろうか?
私はここに、二つの提案を掲げてみたい。




■提案1.アニメは全部ただで流せ■

web上にアップされている違法アニメを一掃するにはどうすれば良いか?
その方法は、まずは全てのアニメを包括する巨大サイトをweb上に作る事だ。
作るのはJAniCAでも、国家でも、現民主党幹事長でオタクで有名な麻生でも良い。
そして、新作アニメがTVで放送されれば、第一回目の放送が終了した翌週(いっそ翌日でも良い)から、そのweb上で再放送する事だ。
アニメ専用サイトで、“高画質の動画”を“完全無料”で放映し、しかも関連情報が得られるコンテンツも多数添えておく。
また、旧作アニメに至っては、全話を初めからアップしておく。
こうして、“違法にアニメをアップする必要性”をなくしてしまえばよいのだ。
無料で高画質のアニメが合法的に見られるのであれば、わざわざ違法行為を犯してまでアニメをアップしようとする輩はほとんどいなくなるはずだ。

しかし、このようにいえば「本末転倒だ」と批判される方がいらっしゃる事だろう。「無料で配信して、どうやって収益を得るのか」と。
だが、少しも本末転倒ではない。
そもそもTVで放送されるアニメは、視聴者がプロダクションに金を払う事で収益を得ている訳ではあるまい。プロダクションに金を払っているのはスポンサーだ。
ならばweb上でも同じ事をすればよいのだ。
ユーザーに無料で配信し、スポンサーを募ってWebCMを入れ、それによって利益を得れば良い。
しかも、web配信には、TV放送にはない利点が三つある。

一つは、広告料とアフリエイトというweb独自の収益がプラスされる点だ。
二つは、日本アニメのファンは世界中にいる為、数ヶ国語の字幕を表示させる機能を設ければ、海外の放送局と余計な契約を交わす事無く、簡単に世界中から視聴者を得られるという点だ。
世界中から視聴者を得られるという事は、世界中からスポンサーを募る事ができ、世界中の広告業者及びアフリエイト業者と契約を結べるという意味だ。
海外でも人気のある作品ならば、これだけで十分に収益は見込めよう。
三つは、TVは放映が終了すれば終わり、DVDは一度売れば終わりだが、web放送はアップし続ける限り“半永久的に収益が得られる”という点だ。
例えスポンサーが見つからず広告料とアフリエイトの収益が小さくとも、その小さな収益を半永久的に得られるのであれば、プロダクションは作品を沢山作れば作るほど(web上にアップするほど)、確実に収益は増えてゆく事になる。

TV放送は、精々、“今、こういうアニメがやってます”という宣伝の手段に過ぎぬと思うべきであり、これからはweb放送の方で収益を得るべきである。
これこそが、違法動画を駆除し、新たな収益を得る為の最良の手段ではないか。
(それにこれは、海外への日本語の普及にも役立つ事だ)


■提案2.DVDに付加価値を与えよ■

web配信で利益を得ることを前述したが、DVDで収益を得る場合に関しても書かせていただく。

海賊版や違法動画に圧されている正規のDVDを売るには、どうすれば良いのか?
それを考えるには、先に次のような問い掛けをすべきだろう。
DVDアニメは、なぜ海賊版に劣るのか?
DVDアニメは、なぜ違法動画に劣るのか?
という問い掛けだ。
むろん、答えは“安価か無料で視聴できる”為だ。
DVDには、一部の特典版を除けば、“アニメを視聴する”という価値しかない。それゆえに、同価値を備えた安価な海賊版や無料の違法動画に劣ってしまう。
では、どうすれば、DVDは海賊版や違法動画に勝る事ができるのか?
簡単な事だ。
“アニメを視聴する”以外の価値をDVDに付加すれば良いのだ。
例えば、以下のような四つの付加価値を与えれば良い。

第一の付加価値は、DVD一巻ごとに記念品をつける事だ。
一巻目には、登場キャラの非売品フィギアを一体。
二巻目には、書き下ろし非売品・短編漫画を一冊。
三巻目には、ポスター等の非売品グッズを一つ。
という具合に、ファンが喜ぶ非売品の品を付ければ良い。
これだけで海賊版と違法動画に差を付けることができる。

第二の付加価値は、DVDに番号を割り振り、宝くじの価値を付ける事だ。
DVDを販売した一年後に抽選会を行い、スタジオ見学、監督や声優のサイン色紙、オリジナルグッズ、現金などの賞与を消費者に与えれば良い。
コアなファンならば、サイン色紙欲しさに“同じDVDを何枚も買ってくれる”可能性も期待できる。
ちなみに、抽選会は重版を重ねる度にやるべきだが、たとえ重版を出さずとも、三年間は連続で行うべきである。
その理由は、抽選会が一度だけでは、消費者は抽選が終わり次第DVDを手放してしまう恐れがある為だ。手放したDVDが中古屋に出回れば、正規のDVDを買う消費者がその分減ってしまう。しかし、三年連続で抽選会が繰り返されるのであれば、DVDを買った消費者は次の年の抽選会では当選できるかも知れないからと期待し、少なくとも三年間はDVDを手放すまい。

第三の付加価値は、語学の教材としての価値を与える事だ。
日本のアニメは、世界各国で吹き返られ販売されている。
吹き替え版が出次第、重版に各国の吹き替え音声を収録し、語学の教材として使えるようにすべきだ。
大好きなアニメが語学の勉強に出来るとなれば、本来アニメなど見ていられない立場の受験生でも、消費者に変える事ができる。
学習教材として、学校ぐるみで購入してくれる所も現れるかもしれない。

第四の付加価値は、特典映像や製作秘話などを追加する事だ。
(これは海賊版や違法動画でも可能だが)


海賊版や違法動画に勝りたいのであれば、これからはDVDに視聴する以外の価値、海賊版や違法動画には無い価値を付けるべきなのだ。
視聴する以外の価値が多くあれば、たとえ前述したweb放送を行ってもDVDを売り続けることは可能になる。
その上で、値段をもっと手ごろにしてくれれば、なおよいだろう。



以上、日本のアニメ産業の衰退を憂いたキチガイが、提案と称した思い付きを書き連ねさせていただいた。
まだコーヒーが温かい内に、筆をおかせていただく。




健やか総本舗亀山堂



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以下の記事は、後ほどコラムで参考資料として使用する為、一旦、こちらに転載・保管しておく。
わざわざ転載するのは、yahoo!ニュースの記事は、直ぐにweb上から消えてしまう為である。



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071227-00000001-sh_mon-bus_all

貧困スパイラルと下流食いビジネスに覆われた日本

■さまざまな理由で搾取される派遣社員

「お母さん、貧乏ってお金かかるんだね」
ある日、派遣社員を夫に持つ母親に、小学生の息子が言った。夫のAさんは、派遣会社に登録して地方都市から東京に出稼ぎに出ていて、毎日日雇いで働きながら仕送りしている。地方にいても、まったく仕事がないからだ。
Aさんの場合、登録した派遣会社から携帯にメールが入り、翌日の仕事が決まるという「携帯派遣」システム。登録時の仕事内容には、いろいろな職種が掲載されているが、実際にあるのは重労働ばかり。それも、極めて劣悪な条件の日雇い労働である。集合時間は、作業開始の1時間前で、10時間労働もザラ。時給は1000円とそれなりの金額だが、集合前と休み時間の1時間は支給外になる。交通費は、一定金額以上は支払われず、自腹を切ることになる。
毎日の取り決めとして、出発時間・集合時間・現場到着時間の3つに遅刻ラインが設定されている。もし1分でも遅刻でもしたら、ペナルティとして500円・500円・1000円を、給与から天引きされるシステムになっている。そのうえ、グループ管理制度がとられていて、自分と同じチームの人間が遅れたら、全員が罰金を取られることになる。派遣先紹介の担当者からは、「指定の作業服やヘルメットを購入すれば給与も上がるし、仕事も増える」 と、甘い言葉で勧誘される。
このように、至るところに、派遣労働者からの搾取の罠が仕掛けられているのだ。Aさんの場合、さらにレストボックスに滞在していて、1泊1500円かかる。レストボックスとは、2段ベッドが並ぶ相部屋で、トイレ、キッチン、シャワーがついている簡易宿泊所。昔は「ドヤ」とか「飯場」と呼ばれた場所である。
こうしてみると、1日働いても6500円しか残らず、そこから交通費の自己負担分や食事代を引けば、5000円前後になってしまう。Aさんの場合、ここから仕送りをするのだが、せいぜい12万円前後がいいところ。これでは、地方に残してきた妻と子は、生活保護一歩手前のギリギリの暮らしなのだ。


■貧困ビジネス=下流食いビジネス花盛り

そんな状況では、急病とか事故とか何かトラブルがあると、医者にかかる費用どころか、生活費も滞ってしまうので、Aさんはどうするのだろうか?
「そんなときには、派遣会社系列のローン会社にお金を借ります」 ということだが、人材派遣業務だけではまだ足りずに、ローンで借金漬けにして、暴利をむさぼろうという魂胆が見え隠れしている。
現在、身分や収入が不安定な派遣労働者やフリーターなど非正規労働者たちから搾取しようとして、いろいろな “貧困”ビジネスがはびこっているのだ。特に、消費者金融などのローン会社やパチンコなどの娯楽会社も、顧客を「低収入の若年男性」にシフトしている。
彼らの不安定な収入では、サラ金に頼らざるを得ないからだ。しかし一度借りると、奈落の底に堕ちる。例えば、29。2%(サラ金の上限金利)で50万円借りると毎月利息を払っていても、3年後には2倍になっている計算だ。サラ金にとっては、彼らは永遠に金利を払い続ける「上客」ということになる。
また身分が不安定で保証人がいないと、部屋を借りたくても借りられないので、保証人紹介なるビジネスも登場する。賃貸契約時に保証人になって、借り主が滞納した際に家賃を保証するシステムだ。その場合、ペナルティとして、借り主本人に、金利を40%上乗せして請求する。40%といえば、以前の出資法の上限であり、現在は違法行為なので刑事罰に相当する犯罪である。
これで、巻頭の子どもの言った意味がおわかりだろう。貧乏になればなるほどお金がかかる、まさに、これが貧困ビジネス=下流食いビジネスなのである。


■下流食いの “真っ当な”言い分

「レストボックスが快適だったら、どうなりますか?世の中レストボックスだらけ、つまりフリーターや派遣社員だらけになってしまいますよ。ですから、ある程度劣悪な条件・環境で我慢してもらうのです。いつかこの場所から抜け出してやる、という気持ちを持ってもらうためです。レストボックスのひどさを非難するばかりでなく、実はこんな面もあるということを理解して欲しいですね」
と語るのは、自らフリーターでレストボックス生活を体験して一念発起、いまや大手人材派遣業などを手がける、経営者M氏である。
1円でも多く利益を出すために、劣悪な条件で働かせておきながら、開き直るような言い分は、どう見ても真っ当だとは思えない。規制緩和で人材派遣会社が多くできたが、法律違反も日常茶飯事に行われている。新聞ネタにはなっただけでも、グッドウィルやフルキャストなど大手派遣会社があげられるが、派遣先で死亡事故が起きていることもあるらしい。
毎日、違う派遣先に行って初心者として作業に加わるのだから、このストレスは計り知れない。まわりの人間からは、いつも「こいつは誰だ」という顔で見られるのだ。
大手のフルキャストの派遣スタッフの間では、やってはいけない2大仕事というのがある。それは、A引越センターとK総業(大手物流会社)。前者の場合、集合場所に行くなり、「勝手なことをするな!」「お客さんとしゃべるな」と怒鳴られて、荷物を少しぶつけただけで、弁償されられるという。
後者のほうは、「海沿いの冷凍庫の中で、南米産の鶏肉を延々と積み上げる作業」で、手足が凍って、凍傷一歩手前、「死ぬ思い」をする地獄の作業なのだ。


■人間の商品化=奴隷売買制度の復活か!

では、そんな彼らを使う側、つまり企業側の状況はどうなっているのだろうか。
「無料お試しキャンペーン実施中、1週間無料、1ヵ月35%オフ、3ヵ月13%オフ」
こんなチラシを片手に、営業マンがセールスをかける。この商品は化粧品ではない、コピーのリースでもない、人間だ。つまり、派遣労働者を商品としてセールスして、いかに競合他社との競争に勝つかを目指しているのである。
多くの場合、派遣先が人材派遣会社から推薦された派遣候補者を直接面接して、各競合会社と競わせて、いちばん安いところに決定される。人件費のダンピング合戦が広がり、派遣される当事者たちは当初派遣会社と契約した金額から、どんどん下げられる。また、下げなければ、仕事にありつけないという弱い立場になっている。
労働時間や勤務形態の一方的な変更も迫られれば、それに従うしかない。昼間勤務から深夜夜間勤務への変更を同一賃金で迫られたり、人手不足だといって事務作業から組み立て作業などへの変換を強制されたりする。


■官公庁が推進する競争入札の現場では?

競争に勝ち抜くために、とことんダンピングするというのは、民間企業だけではなく、官公庁や地方公共団体の現場でも起きている。総務省のデータ入力業務に従事していた女性は、競争入札で仕事は維持できたものの、時給が400円以上ダウンさせられた。
国や地方公共団体では、これまでコスト削減目的で活用してきた非常勤職員や臨時職員をやめて、人材派遣に切り替えている。派遣会社同士で料金を競わせて、1円でも安い金額を提示した業者と契約をする競争入札制度が適用されているのだ。
労働者の待遇や人権などを守るべき国や公共団体、自らが、労働者の商品化の先頭を走っているのである。その結果、入札現場では恐ろしいことが起きている。
数年前に、東京都が「電子都庁化」の一環として導入する文書統合システムを、日立製作所が、なんと750円で入札したことがあった。その際の他の入札参加企業の金額は次の通りだが、さすがに公正取引委員会からも「不当廉売」の疑いがあるとして警告されて、同社は辞退することになった。

・日立製作所と他の入札参加企業の金額
東芝1億3200万円
NEC9800万円
NTTデータ1000万円
日本ユニシス497万円
日本IBM155万円
富士通82万円
日立製作所750円

日立製作所の750円も異常だが、これだけ金額にバラツキがあるということは、それだけ単価以上に旨みのある仕事だということなのか。こうした無茶苦茶な不当廉売が、労働者の雇用条件に直接影響するのである。末端では、これまでの賃金基準が大きく値崩れして、最低賃金どころか生活保護一歩手前の状況に陥ってしまった。


■日本の労働現場は現代の地獄絵図に

一方、本来なら民間の労働条件をリードするべき、大手企業の状況はどうなっているのだろうか?現在、日本の外貨獲得高は50兆円あまりだが、トヨタ、キャノン、ソニーなど大手10社で3分の1、上位30社で半分を稼いでいる。その利益の8割は、実は海外市場への輸出と部品供給で占めており、日本の国内市場の利益は2割にすぎないのだ。
ということは、「海外第一、国内は二の次」で、国内市場がいくら貧しくても大儲けしているのが、トヨタをはじめとする大手企業の現状だ。
そのうえ、海外で儲けた分を国内の優遇税制で納税すると、法人税は売上高のたったの1%。なぜかというと、通常の法人税は40%だが、実際にはいろいろの特例措置があり、ほとんどゼロに近いような税率になってしまうのである。
恐るべき大企業優遇措置。その大企業の現場では、「国際競争力の維持」という名目で、人間破壊に近いような派遣労働や偽装労働がまかり通っている。
青森や秋田など失業率の高い県から人を集めて、トヨタの本拠地、愛知県へと送り込んでいくシステムができあがっている。この役目を担うのが、人材派遣業者で、いうなれば現代版“奴隷船”ともいうべきか。
企業としては、固定費としての人件費から、経費としての外注加工費に転換させて、利益をとことん追求する。そのしわ寄せが、労働者個人にまわされているということだ。


■まさに21世紀型帝国主義が確立される

経団連会長の御手洗冨士夫氏(キャノン会長)は、さらに安く人材の確保を目指して、東南アジアをはじめとする外国人労働者の導入を推進しようとしている。これが採用されれば、
経営者正規社員契約社員パート社員派遣社員(外国人社員)
という見事なピラミッド型の業務形態になり、日本人派遣社員は外国人労働者と競って仕事を維持するために、ますます劣悪な労働条件で働かざるを得なくなる。まさに、日本の労働現場は現代の地獄絵図と化す。業界内でも、
大企業下請け企業(第一次第二次第三次など)人材派遣会社
という従属関係が固定化されて、21世紀型帝国主義が確立されることになるのだ。その地獄の仕組みからどうやって抜け出すかは、本人次第だが、いったん派遣業務に就いてしまうと相当に困難だと思われるし、その方法もなかなか見つからない。現在のところ、各個人の奮闘に期待するしかないのが現状なのだ。





<参考リンク>

ドラゴンボールで学ぶ「ニート・フリーター問題」

(特に、「(2)孫一家に学ぶ就職氷河期問題」の部分)




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